下澤達雄先生の臨床検査かわら版 『アレルギーの検査』
特集でも紹介しましたが、大人になってからアレルギーになる人が増えています。
アレルギーを発症する可能性は年齢にかかわらずだれにでもあります。
心配なことがあれば、まずは専門医による検査を受けてみましょう。
国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 教授
下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)
2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本臨床検査医学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。「長年楽しんできたビール。最近、ビール酵母でIgE抗体が産生されることがわかりました。好きなものを食べられなくなるって本当につらいですね。今やっている脱感作療法がうまくいくといいのですが」とのこと。
すぐに現れる即時型と時間を経て現れる遅延型
アレルギーには、原因となる物質を摂取あるいは接触してすぐに現れる即時型アレルギーと、アレルギー反応が現れるまで数時間から数週間以上かかる遅延型アレルギーがあります。即時型アレルギーは免疫グロブリンのE型(IgE抗体)が引き起こすもので、花粉症が代表的です。一方、遅延型はT細胞が関与しており、接触性皮膚炎が代表的です。食物アレルギーには、即時型と遅延型の両方の症状があります。
診断には5W1H の情報が必要
アレルギーの診断では、まず問診が行われます。いつ、どこで、どのように、どれくらい、何がきっかけでなど、5W1Hの情報が診断には必要です。診察の際に思い出すのではなく、あらかじめメモしておくといいでしょう。続いて、アレルギー反応を起こしている部位を診察します。花粉症では鼻や目の粘膜の腫れ、発赤などを確認します。これにより診断がつき、原因物質(アレルゲン)が特定されれば、それに対する治療が行われます。アレルゲンがはっきりしない場合には、さらに血液検査などを行います。
アレルゲンを特定するための検査
即時型アレルギーの場合は、原因物質であるアレルゲンに反応するIgEの量を血液検査 で測定します。アレルゲンが不明の場合は、まずIgEの全体量が高いことを確認し、そののち、怪しい物質ごとにIgEの量を測定します。鼻汁や血液中の好酸球(白血球の一種でアレルギーが起こっている部位に集まる性質がある)数の計測も行われます。また、アレルゲンの抽出液を皮膚に滴下したあと、針で軽く刺して刺激する検査(プリックテスト )や、食物アレルギーの場合は疑わしい食物を少量食べて反応をみる負荷試験(食物経口負荷試験) も行われます。これらの試験は危険を伴うので、専門医のもとで注意して行われます。
遅延型アレルギーの検査で行われるパッチテスト は、アレルゲンの抽出液を皮膚に貼り付け、48 ~ 72 時間後
に反応をみる試験です。食物アレルギーでは、即時型同様、少量摂取の数時間~数日後の反応を観察します。こちらも症状を誘発させるため、専門医のもとで慎重に行われます。
薬剤によるアレルギー反応が疑われる場合は、リンパ球刺激試験 を行います。血液中のリンパ球を分離してアレルゲンとリンパ球の反応をみるもので、患者さんに負担をかけずに診断できます。しかし、この試験は食物アレルギーや接触性皮膚炎には用いることができません。
これからのアレルギー検査
アレルギー検査には症状を誘発させて診断するものが多く、患者さんはつらい思いをしますし、危険も伴います。小児の場合、採血も大変です。このような状況を改善するため、現在東京大学と国立成育医療研究センターが共同で、尿を用いた食物アレルギー検査の開発を進めています。実用化されれば、家庭でも、おしめの尿からでも簡単に検査ができるようになります。症状が出たときに病院外でも安全に検査できる方法が、さらに開発されることが望まれます。