下澤達雄先生の臨床検査かわら版 『血液検査で免疫異常がわかる!?』
膠原病の検査
年齢を重ねたり、食生活が乱れたり、あるいはストレスが溜まって
免疫力が低下していると病気にかかりやすいと言われます。
私たちの体に備わっている免疫という機能について考えてみましょう。

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 教授
下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)
2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本臨床検査医学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。「年々地球温暖化の影響で桜の開花予測が難しくなっています。満開の桜をゆっくり楽しみたいと思っています」
免疫ってどういうもの?
新型コロナウイルス感染症が拡大したとき、免疫機能が低下する病気を持っている人はワクチンを早めに打つようにといわれたことを覚えていますか?この免疫機能って、よく聞きますが、どういうものなのでしょうか。簡単に言うと、細菌やウイルスなどの病原体やがんなどの異物から体を守ってくれるシステムが免疫です。免疫システムの機能が低下すると侵入してきた異物に対抗できず、感染症やがんにかかりやすくなります。
免疫異常が病気を引き起こす
通常は私たちの体を守ってくれている免疫システムですが、そのどこかが異常をきたすことで起こる病気があります。たとえば、花粉症などのアレルギーは、本来は外敵(攻撃対象)ではない花粉や食物に対する免疫の過剰反応が引き起こす症状です。さらに、外敵だけでなく、自分の体の一部を外敵と間違えて攻撃してしまう病気があります。その代表的なものが、慢性甲状腺炎(橋本病)や膠原病です。慢性甲状腺炎では甲状腺の細胞に対する抗体(異物を排除するために働くたんぱく質)が、膠原病では細胞核(遺伝子情報の本体であるDNAが入っている)に対する抗体(抗核抗体)ができます。これらの抗体の有無を血液検査で調べます。膠原病のうち、抗核抗体と関連があるものは、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、多発性筋炎/皮膚筋炎、混合性結合組織病の5つです。抗核抗体には多くの種類があり、核のどの成分を攻撃するかによって、関係する病気が異なってきます。そこで、抗核抗体の検査結果が陽性の場合は、どの成分に対する抗体なのかをさらに詳しく検査します。抗核抗体の値は陰性、40 倍、80 倍、160 倍と、陽性となった血液の希釈倍率で表し、40 倍未満が陰性です。健康な人でも抗核抗体が陽性になることがありますし、年齢が高くなると自然に上昇することもあります。ですから陽性でもあわてず、専門医(リウマチアレルギー内科、膠原病内科など)を受診してください。炎症を抑えたり環境要因を避けたりすることで抗体の量を減らし、症状をコントロールすることができます。免疫異常は検査だけでは診断できません。病歴や身体所見、自他覚症状などから総合的に判断されます。