Dr.中原の健康こぼれ話65

Dr.中原の健康こぼれ話65

監修

西武学園医学技術専門学校 東京校 校長/医学博士

中原 英臣 先生

肩こり

日本人にとってもっとも多い自覚症状の一つは肩凝りでしょう。国民生活基礎調査によると、日本人が感じる自覚症状のなかで、女性でもっとも多いのは肩凝りですし、男性でも3番目に多いのです。肩凝りは首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけてこわばりや痛みを感じる症状ですが、頭痛や吐き気を伴うこともあります。肩凝りに関係する筋肉はいろいろありますが、「僧帽筋」と呼ばれる筋肉が主役となります。意外なことですが、「肩凝り」という症状についての医学的な専門用語はありません。肩凝りという表現は、じつは明治の文豪である夏目漱石が創作した言葉なのです。漱石は1910年に発表した名作の『門』のなかで「頸と肩の継目の少し背中に寄った局部が、石のように凝っていた」と書いています。すでに述べてように、肩凝りの原因は完全にはわかっていませんが、筋肉へ酸素の補給が不足したり、体内の老廃物が筋肉に蓄積することで起きるようです。神経への刺激が肩凝りを生じさせることもあります。もともと直立歩行をするように進化した人間は、肩凝りが起きやすい構造になっています。首から肩にかけての筋肉は、全身の体重の10%もある頭を支えています。多くの動物は頭を支える必要がないので肩凝りになることはありません。肩凝りを感じる僧帽筋は、頭を一定の角度に保つ主役になるだけでなく、左右の腕も支えています。そのため筋肉が疲労して肩凝りになりやすいというわけです。姿勢によっても筋肉にかかる負担が違ってきます。そのため、普段から猫背の人は肩凝りになりやすいということになります。肩甲骨のまわりに筋肉をいろいろな方向に動かすことで柔軟性を高めるストレッチや肩甲骨を内側に寄せながら丸まった背中を伸ばすストレッチなどがお勧めです。

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