マイ・ドクター選びにメリット かかりつけ医機能報告制度

マイ・ドクター選びにメリット かかりつけ医機能報告制度

厚生労働省による「かかりつけ医機能報告制度」が2025年4月に施行されました。この制度により、地域の病院や診療所がどんな病気を診てくれるのか、時間外診療や在宅医療、介護サービスとの連携に対応してくれるのかなどの情報が公開されます。かかりつけ医を選ぶ際の指針になるのではないでしょうか。

「治し、支える医療」へ持てる機能を明確化

この制度がつくられたきっかけの1つは、新型コロナウイルスの流行です。国は「発熱したら、まずはかかりつけ医へ」と呼びかけましたが、「かかりつけ医だと思っていた医師に診察やワクチン接種を断られた」というケースが相次ぎ、混乱が生じました。また、少子高齢化により慢性疾患や認知症で医療と介護を必要とする高齢者が増え続けています。しかし、医師の高齢化や医療従事者の働き方改革などもあって、マンパワーには限界があります。高齢者人口がピークとなる2040年代に向け、「治し、支える医療」を実現するためには、かかりつけ医の役割強化が「待ったなし」の状態です。そこで日常的な診療や健康管理に携わる「かかりつけ医の機能」が発揮できるような制度整備をうたった改正医療法が、2023年に成立しました。この改正医療法に基づいて創設されたのがかかりつけ医機能報告制度です。この制度では「かかりつけ医機能」を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義し、大学病院などの特定機能病院と歯科診療所を除く、すべての病院や診療所を対象としています。これらの医療機関は、自院の機能についての都道府県への定期的な報告が義務とされています。報告内容には1号機能と2号機能があります。1号機能とは「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を、総合的かつ継続的に行う機能」とされています。具体的には循環器系、消化器系、腎・泌尿器系など17診療領域ごとに、一次診療が可能かどうかと一次診療を行うことができる疾患を報告します。報告できる疾患として、高血圧、腰痛、かぜ・感冒など、外来患者の多い40疾患が挙げられています(下右表)。かかりつけ医機能に関する研修を修了した医師や、幅広い病気を治療できる総合診療専門医の有無、患者さんからの医療相談に応じられることなども報告事項です(1号機能は院内に掲示)。2号機能は、1号機能を持つと確認できた医療機関に報告を求めるもので、①通常の診療時間外の診療、②入退院時の支援、③在宅医療の提供、④介護サービスなどと連携した医療の提供の4つができるかどうかを報告します。たとえば、①の時間外の診療では、在宅当番医制や休日夜間急患センターなどに参加しているか、体調が悪化した患者さんへの随時対応(他医療機関との連携を含む)をしているか、などが要件となります。

情報はサイトなどで公開 書面で関係確認も可能

報告された情報は、都道府県による確認を経て、公表されます。患者さんがかかりつけ医を選ぶときに役立てられるように、厚生労働省の医療情報ネット「ナビイ」にも反映される予定です。トップページに「かかりつけ医機能で探す」ボタンを追加したり、各医療機関の紹介ページに「かかりつけ医機能」をまとめて閲覧できるタブを設けたりする案などが検討されています。また、慢性疾患があり、在宅や外来で一定期間(おおむね4か月)以上の継続的な医療を必要とする患者さんや家族が希望すれば、医療機関と(提供される医療サービスなどを説明した)書面を交わして「かかりつけ関係」を確認できるようになります。ただし、これはあくまで努力義務で、医療機関に診療を義務づけるものではありません。風邪などでたまに受診するケースは対象外です。2025年末には医療機関に報告を要請し、第1回目の情報公開は2026年4月以降となる見通しです。報告と情報公開は毎年継続されます。さらに都道府県には、地域の外来医療関係者との協議の場を設け、報告に基づいて協議を行うことが求められています。それにより、地域で不足している在宅医療や時間外診療などの機能を明らかにし、対策を検討・推進します。この制度が導入されても、日本の医療制度の大きな特徴である「フリーアクセス」(クリニックから大病院まで、患者自身が受診する医療機関を自由に選び、必要な医療サービスを受けられる制度)は維持されます。高齢者にとって、かかりつけ医は非常に心強い存在で、重複受診による無駄な検査や投薬を防げるメ リットもあります。この制度によってコロナ禍のときのような混乱を回避できるかは未知数であり、総合的な診療が行える人材の育成も含め、制度のさらなる充実が望まれます。

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