料理の豆知識Vol. 85 今回のテーマ【おせち】

料理の豆知識Vol. 85 今回のテーマ【おせち】

このコーナーでは、ちょっと知ってほしい食事に関する豆知識をお届けします。
今回は多くの人に好まれる麺を取り上げました。

神に供える料理がルーツ 日本の伝統食「おせち」

おせちは奈良から平安時代、季節の変わり目である節句の日に、無病息災や厄除けなどを願って神様にお供えした料理「節せ ち供く」に由来します。江戸時代になると、節句の日の中でも特に重要な正月の料理を指す言葉になりました。正月には山の幸、海の幸を取りそろえ、五穀豊穣をもたらす神様をもてなします。家族の健康と幸せを願う気持ちが込められたおせちは、時代を経て現在まで受け継がれています。

食材に込められた願いで さらに味わい深く

 昔は五段重のおせちが一般的でした。一番下の五の重は、神様からいただいた福を入れる場所として空にしておきます。現代では三段の重箱に入れるのが主流で、それぞれの段には詰める料理が決まっています。
 一番上の「一の重」には、祝い肴と口取りを詰めます。祝い肴はお酒やお屠蘇と一緒に食べる肴で、おせち料理の基本です。関東では黒豆、数の子、田作り(ごまめ)が、関西では田作りの代わりにたたきごぼうが入ります。
 黒豆は、一年をまめに働けるように願うもの。数の子は、黄金色の卵が詰まった様子が子孫繁栄の象徴とされています。片口イワシを炒り煮した田作りは、豊作を願っています。「魚なのに豊作祈願?」と思われるかもしれませんが、昔はイワシを田んぼの肥料にしていたためです。たたきごぼうは、根を深く張るごぼうが家が代々続くことを象徴するとされました。
 口取りは会席料理の最初に出される前菜のような位置づけの料理です。おせちでは紅白かまぼこや昆布巻きなどのほか、きんとんや伊達巻きなど、甘めの料理も含まれます。
 「二の重」は、海の幸の焼き物と、なますなどの酢の物を詰めます。出世魚のブリ、縁起のよい鯛やエビなどがメインで、現代では肉料理も二の重に詰めます。「三の重」は、煮物(煮しめ)を詰めます。野菜や乾物それぞれの持ち味を生かして、1種類ずつ煮るのが基本です。子宝を願う里芋、先を見通せるれんこん、「ん」(運)が付くにんじん、こんにゃくなどの煮物が詰まったこの重には、それぞれ家庭の味がよく表れています。

ライフスタイルに合った 新しいおせちの楽しみ方

 伝統的なおせち料理をご紹介しましたが、しきたりやルールに縛られず、自分たちのスタイルでお正月の食事を楽しむ人も増えています。
 料亭やデパートなどから取り寄せたり、おせちにこだわらず、ふだんより時間かけてつくった料理や鍋料理などでお正月を祝うのもよいでしょう。あるいは、手づくりのおせちのよさも残しつつ、煮るのに時間のかかる黒豆などは市販品を使ったり、煮しめも一種類ずつではなく、いろいろな食材を一度に炊くなどして手間を省き、効率的につくる方法もあります。
 また、重箱がなくても、大皿に盛り合わせるだけで十分見栄えがしますし、塗りや赤絵、銀彩が入った器はお正月らしさを演出できます。それぞれの家庭に合ったやり方でおせちを楽しみたいものです。

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