下澤達雄先生の臨床検査かわら版
下澤達雄先生の臨床検査かわら版
『高血圧10のファクトとは?』
高血圧治療ガイドラインの改訂で治療が変わる
前号では、最新の高血圧治療ガイドラインで高齢者の降圧目標が変更された話をしました。
今回はガイドライン作成委員会が発表した「高血圧の10 のファクト」について紹介しましょう。
意外と知られていない衝撃的な事実なので、ぜひご確認を。
国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 教授
下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)
2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本臨床検査医学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。「秋の味覚や芸術の秋を楽しみながら、健康の基本、生活習慣を(食事以外にもリラクゼーションなども)見直したいと思っています」。
高血圧治療は変革が必要!?
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を編集した日本高血圧学会の委員会は、今回、一般の患者さんのために、「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」を取りまとめ発表しました。 血圧を下げることのメリットは、これまでの研究から明らかです。しかし日本は欧米諸国に比べて高血圧に使える薬の種類が多いにもかかわらず、ファクト3にあるように、血圧をきちんとコントロールできている患者さんの数は世界的に最下位レベルです。この現状を打開すべく、今回の「高血圧管理・治療ガイドライン」では、生活習慣の管理・改善を1か月行って血圧が下がらない人や、特に糖尿病や慢性腎疾患のある人は、薬を飲むことで速やかに130/80mmHg まで血圧を下げることを推奨しています。最初に使うべき薬は、血管を拡張するカルシウム拮抗薬、血圧を上昇させるホルモンの働きを抑制するレニン・アンジオテンシン系抑制薬、心拍数を少なくして心臓の収縮性を抑えるβ遮断薬、塩分を排泄させる利尿薬の4 種類です。高血圧の原因は1つではなく多岐にわたるため、これらの薬を組み合わせて血圧のコントロールを行う必要があります。海外ではβ遮断薬や利尿薬はよく使われるのですが、わが国では高血圧治療用にはあまり使われないことが、血圧コントロール不良の一因ではないかともいわれています。
副作用が気になったら相談を
さらに日本では血圧を上昇させるホルモンを抑えつつ利尿作用もあるARNI という薬や、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンの作用を抑える薬を、降圧薬として使うことができます。前述の4 種類の薬を組み合わせても血圧が下がらない人、糖尿病や慢性腎疾患のある人には、これらの薬も使うことが推奨されています。ファクト9にあるように、降圧によって得られる利益のほうが副作用よりも大きいので、きちんと薬を飲んで血圧をコントロールしましょう。気になる副作用や違和感がある場合には、速やかに医師に相談してください。
※日本高血圧学会公式キャラクター、良塩(よしお)くんの部屋
このチャンネルでは、血圧の大切な情報をわかりやすく発信しています。
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