こころとからだにやさしい『漢方入門』第2回 整体観

こころとからだにやさしい『漢方入門』第2回 整体観

大きな病気ではなくても、いつも気になっていること。
たとえば、肌荒れがよくならないとか。そんな人はぜひご相談ください。

監修

薬石花房 幸福薬局 院長

幸井 俊高 先生 (こうい ・としたか)

東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より日本人として18 人目の中医師の認定を受ける。日経メディカルにて長年にわたり漢方連載を担当。著書に『症状・疾患別にみる 漢方治療指針』『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』(ともに日経BP 社)など多数。
https://kofukuyakkyoku.com/

からだをひとつの 有機体と捉える

 人のからだは心臓、肺、胃、皮膚などの器官に分けて捉えることができます。それぞれに役割がありますが、それらは個別にばらばらに働いているわけではなく、有機的に連携し関連しあって生きています。このように人体をひとつの有機体と捉える考え方を「整体観」といいます。心臓の病気は心臓だけの問題ではなく、皮膚の病気は皮膚だけのトラブルではない場合もあるということです。漢方ではこの整体観をベースに病気の治療を行っています。
 20歳の女性Bさんの悩みはニキビです。両頬と顎に赤いニキビができています。肌質はやや脂性です。皮膚科でケミカルピーリングも含めさまざまな治療法を試しましたが、完治しません。BMIが24.0とやや高めです。小学校の高学年くらいから便秘ぎみです。
 Bさんの場合、ニキビという皮膚の病気の根本に便秘体質があるようです。そこでBさんには便秘体質を改善する漢方薬の1つである四しぎゃくさん逆散などを服用してもらいました。服用を始めて2か月目から次第にお通じがよくなり、ニキビも目立たなくなってきました。半年後には、ニキビはほとんどわからなくなるくらいに改善しました。体重も減って体調がいいので1年間漢方薬を服用し、治療を終了しました。その後1年以上経ちますが、ニキビも便秘も再発していません。

肌の悩みは 便秘体質の改善から

 皮膚の病気であるニキビを抗生物質などでいったんは消すことができても、根本にある便秘体質が解消されない限り、ニキビはまた出てきます。ニキビを治療したくて皮膚科に行っても、「では便秘を治しましょう」と言ってくれる病院はなかなかありません。しかし漢方では、ニキビの患者さんが来ると、「お通じはどうですか」「生理はどうですか」と、ニキビに関係なさそうなことも尋ね、患者さんの体質を把握していきます。その結果、Bさんの場合は便秘体質を治せばニキビも治るとわかるのです。
 病気の根本原因が病気の部位以外にあることも多いのです。漢方の専門家は整体観に基づいて病気の治療をします。皮膚なら皮膚という部位だけを治療するのではなく、からだ全体をよい方向へ改善することにより、結果として皮膚の病気を治すのです。

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