薬局に行かずに服薬指導が受けられる オンライン薬局

薬局に行かずに服薬指導が受けられる オンライン薬局

 コロナ禍により、リモート会議などオンラインを活用したコミュニケーション手段の利用が急速に広がりました。その流れの中で登場したのが、オンライン薬局です。オンライン薬局とは、どのような仕組みで、どうやって利用したらよいのでしょうか。その活用法をまとめてみました。

オンライン服薬指導 コロナ禍がきっかけに

 オンライン薬局は、調剤薬局の店舗に出向かずに、インターネット(ウェブ)を介した手続きのみで、医師の処方薬を受け取れる医療サービスです。実際に店舗のある薬局が実施している場合もあります。日本でオンライン薬局が普及し始めたのは、2020年4月に、新型コロナウイルス感染症対策の臨時措置として、オンライン服薬指導が解禁になったのがきっかけです。
 服薬指導とは、薬剤師が患者に対して医療用医薬品の服用方法や薬効、主な副作用、使用上の注意の説明などを行うことです。調剤薬局の重要な業務の1つで、医療機関で処方される医薬品は、薬剤師の服薬指導なしに受け取ることはできません。従来は対面が原則でしたが、2019年に関連する法律が改正され、オンライン服薬指導が初めて制度化されました。月経困難症を緩和する目的で使用される低用量ピルや男性型脱毛症の治療薬の処方などにも、オンライン薬局が活用されています。2023年1月からは通信ネットワークを使った電子処方せん(下図)の運用も始まり、オンライン薬局の利便性が高まりました。

待ち時間がなく 感染症対策にも

 オンライン薬局を利用するメリットは、店舗を訪れることなく、患者さんが好きな場所で服薬指導や処方薬の受け取りができることです。薬局への移動時間や処方を待つ時間を有効活用でき、感染症対策にもなります。忙しくて医療機関に付き添えない家族などと一緒に、服薬指導を受けることもできます。
 また、2020年9月から薬局・薬剤師に義務化されている服薬フォローアップも、オンラインで受けられます。服薬フォローアップとは、調剤した薬の使用期間中に薬の使用状況、市販薬なども含めた併用薬、患者さんの状態や生活環境などを把握し、必要に応じて指導や相談を行うことです。アプリチャットなどコミュニケーションの手段が豊富なオンライン薬局は、患者さんから薬剤師に質問などをしやすいというメリットがあります。かかりつけ薬局がある人は、その薬局がオンラインでの服薬指導や服薬フォローアップを実施しているか、確認してみてもよいでしょう。
 オンライン薬局のデメリットは、パソコンやスマートフォンの操作が不慣れな人には使いにくい場合があることです。医療用麻薬や向精神薬など、初診時にはオンラインでの服薬指導や処方ができない薬もあります。自宅への処方薬の配送に200〜1,650円程度の配送料がかかる場合があるのも、デメリットの1つです。

服薬指導ツールと 薬の配送システムも登場

 実際に利用する際には、医療機関で発行してもらった電子処方せんを実店舗のある薬局やオンライン薬局に送り、スマートフォンやパソコンを用いたビデオ通話で、薬剤師のオンライン服薬指導を受けます。  服薬指導には、ウェブ上のブラウザ(ソフトウェア)を使うタイプと、専用アプリやLINEなどのメッセンジャーアプリを使うものがあります。その中でよく利用されているのが、オンライン診療とオンライン服薬指導・処方を1つのツールで受けられる連携型のサービスです。
 薬局チェーンが独自のツールを使って、オンライン服薬指導と決済、電子おくすり手帳などのサービスを提供しているケースもあります。
 実店舗で処方薬を受け取っている患者さんに対しても、アプリやLINEなどを利用して、情報提供や服薬フォローアップを実施する薬局が増えています。
 処方薬の受け取りは、自宅に配送してもらう、コンビニエンスストアで受け取る、薬局などの店舗前に設置されている専用ロッカーで受け取るなどの方法が選べます。服薬指導のみオンラインで受け、実店舗で処方薬を受け取ることも可能です。
 オンライン服薬指導や薬の配送には、異業種の参入も相次いでいます。たとえば、世界最大級のショッピングサイトを運営するアマゾン(Amazon)は、米国での経験を基に、2024年7月から日本でもアマゾンファーマシーを運営しています。
 コンビニ大手のファミリーマートは、首都圏の店舗を中心に、手数料・配送料無料で処方薬を指定の店舗で24時間受け取れる「ファミマシー」を展開中です。プライバシーに配慮し、コンビニ店員には薬ということしかわからないようになっています。
 セブン・イレブンも、一部の店舗に設置されている宅配ロッカーを活用して、配送料無料で処方薬を受け取れるサービスを開始しました。電子処方せんに対応している医療機関も増えています。体調が悪くて薬局に行くのもつらいときや、医療用医薬品などを簡単に入手したいというときなどに、オンラインでの服薬指導や処方薬の受け取りを試してみてはいかがでしょう。

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