こころとからだにやさしい『漢方入門』第1回 漢方の特性
近年、漢方に対する関心が高まっています。漢方とはどういうものなのでしょうか。
今号から、幸福薬局の幸井俊高先生に、漢方の特徴や効用について、紹介してもらいます。

薬石花房 幸福薬局 院長
幸井 俊高 先生 (こうい ・としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より日本人として18 人目の中医師の認定を受ける。日経メディカルにて長年にわたり漢方連載を担当。著書に『症状・疾患別にみる 漢方治療指針』『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』(ともに日経BP 社)など多数。
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体質に着目して 症状を改善する
病気には必ず「原因」と「結果」があります。原因↓病気↓結果、という関係です。「結果」とは痛みや炎症、情緒不安定や倦怠感などの症状です。「原因」には、患者さんの体質が深く関与しています。44歳の女性Aさんは寝つきが悪く、布団に入ってから1時間くらいは目がさえたままで眠れません。親の介護や子どもの受験、夫の仕事などに対する不安が強くなったころから不眠症になりました。睡眠薬を飲めば眠れますが、飲まないと眠れません。
Aさんの場合、病気(不眠症)の結果は、寝つきが悪い(入眠障害)という症状で、原因は、不安を強く感じやすい体質です。そこでAさんには、この体質を改善する漢方薬の1つである
原因に対して処方する 「弁証論治」
睡眠薬は症状(不眠)を抑えてくれる薬なので、飲めば体質に関係なく眠くなります。しかし睡眠薬には体質を改善する力はありません。一方、帰脾湯は不安を強く感じやすいという体質そのものを改善します。飲んですぐに効果が出るわけではありませんが、飲み続けるうちに、夜になると自然に眠れるようになります。西洋医学のように症状をコントロールする治療法を対症療法というのに対し、漢方のように原因から治療する方法を
※ 帰脾湯は、人参、