こころとからだにやさしい『漢方入門』第3回 心身一如
ストレスがたまると体調もすぐれないことがよくあります。
漢方では症状とともに、こころのありようについて重視します。
薬石花房 幸福薬局 院長
幸井 俊高 先生 (こうい ・としたか)
東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より日本人として18 人目の中医師の認定を受ける。日経メディカルにて長年にわたり漢方連載を担当。著書に『症状・疾患別にみる 漢方治療指針』『医師・薬剤師のための漢方のエッセンス』(ともに日経BP 社)など多数。
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こころとからだの 密接な関係
漢方は、こころとからだの関係を重視します。たとえばストレスで胃が痛む場合は、精神面の乱れが肉体の不調を引き起こしています。あるいは、つらい症状が続いて不眠症になっている場合は、肉体の病気が精神的な不調の原因となっています。
このように、こころとからだは切っても切れない関係にあります。これを「
漢方は、この心身一如の関係を重視して治療にあたります。人体を1つの有機体と捉える考え方(整体観)です。ストレス性の胃痛の場合は、痛みだけを抑えるのではなく、ストレスに対して胃を強くすることで胃痛の完治を目指します。
母親と一緒に来局した男子高校生のCさんは、不登校に悩まされています。朝、なかなか起きられません。倦怠感が強く、吐き気や腹痛を生じやすく、登校できません。児童精神科や心療内科を受診しましたが、解決しなかったそうです。
Cさんは、子どものころから胃腸が丈夫ではなかったようで、それが心身の不調の根本にあるようです。そこでCさんには、胃腸を健やかにする漢方薬の1つである
胃腸を整え 「気」を補う
六君子湯は胃腸の不調に用いられることが多い処方ですが、単なる胃腸薬ではありません。胃腸機能を高めて「気」を補う処方です。「気」は元気、やる気などの「気」で、生命エネルギーに近い概念です。つまり六君子湯は、こころとからだの両面を改善する処方です。
Cさんの場合は胃腸機能の低下による「気」の不足が不登校の原因だったため、漢方で胃腸機能と「気」の両面からサポートし、不登校を解決できました。胃腸薬で胃腸症状を抑えるだけでは不登校は治らなかったと思われます。漢方によるこころとからだの両面からの治療が功を奏しました。
体調を崩すとさまざまな部位に症状が現れますが、「胃腸は胃腸」「こころはこころ」と分けて症状をコントロールするのではなく、その人全体を健康な状態に持っていくのが漢方です。




