新型コロナ禍の今だから、知っておきたい
『冬の感染症対策』

新型コロナ禍の今だから、知っておきたい
『冬の感染症対策』

世界中に新型コロナウイルス感染症が広がる中、日本ではインフルエンザが流行する季節になりました。毎シーズン、数百万~千数百万人の人がインフルエンザに感染しているほか、冬場にはRSウイルス感染症、溶連菌感染症、マイコプラズマ感染症なども流行することがあります。これらの感染症にかからないために、また、重症化を防ぐために、それぞれの感染症の特徴と違いを知って、新型コロナ禍における冬の感染症に備えましょう。

監修

神奈川県川崎市健康安全研究所所長

岡部 信彦 先生 (おかべ・のぶひこ)

1971 年、東京慈恵会医科大学医学部卒業。
米国バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科部長、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(フィリピン)伝染性疾患予防対策課課長、東京慈恵会医科大学小児科助教授、国立感染症研究所感染症情報センターセンター長などを歴任。
2013 年より現職。内閣府・新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員、厚生労働省・新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード構成員。

症状では区別がつかない新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナウイルス)とインフルエンザの症状は、発熱、咳・喉の痛み、息苦しさ、倦怠感、関節痛、頭痛などです。この2つの感染症に同時にかかる可能性は少ないとみられますが、症状は似ており、どちらに感染したのか症状だけでは診断は難しいのが実情です(下表)。そのため、この2つの感染症が同時期に流行している地域では、鼻腔拭い液や唾液などを採取して、新型コロナウイルスとインフルエンザの感染の有無を調べる検査を行うことが多くなるでしょう。
高齢者や、糖尿病、高血圧、心臓病など基礎疾患のある人が重症化しやすいのもこの2つの感染症の共通点です。2019年にはインフルエンザにより国内で3575人が亡くなっています。
ただ、新型コロナウイルスでは、インフルエンザのような突然の高熱というのは少なく、味覚障害や嗅覚障害を伴うこともあり、一般的な風邪のような比較的軽い症状で済む人が8割程度であるのも特徴の1つです。インフルエンザでも無症状か軽い症状で済む人はいますが、その割合は、新型コロナウイルスのほうが多いと言えそうです。
一方で、新型コロナウイルスにかかる人の2割は中等症から重症になり、肺炎を起こして酸素の補充などが必要になります。5%の人は集中治療室に入るくらい重篤化し、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)を使うこともあります(下図)。割合としては非常に少ないのですが、特に基礎疾患がない20代~50代の人でも、重症化したり死亡したり、後遺症が残ったりすることがあるので、比較的若い世代でも、症状の変化には注意が必要です。また、新型コロナウイルスは、発病1~2日前からほかの人に感染させる可能性があり、本人が気づかないうちにほかの人に感染を広げてしまうことがあることもわかってきました。
新型コロナウイルスは、中国武漢市で発生してから1年足らずと日が浅く、まだわかっていないことも多いのが現状です。これに対し、インフルエンザと人間との闘いははるか昔から続いており、予防ワクチンや複数の治療薬が実用化されています。インフルエンザのワクチンは発病を100%阻止するほどの効果はなくても、多くの人の重症化や死亡のリスクを下げる効果が期待できます。特に高齢者や基礎疾患のある人は、インフルエンザによる重症化を防ぐためにもワクチンを接種してお くことが世界で勧められています。

RSウイルス、溶連菌、マイコプラズマなども

冬には、インフルエンザ以外にも、さまざまな感染症が流行します。たとえば、RSウイルス感染症は、秋から冬にかけて流行しやすい病気です。一生のうちに何度もかかる病気ですが、乳児が初めて感染したときや高齢者は気管支炎や肺炎になりやすいので注意が必要です。赤ちゃんの喉の辺りから「ぜこぜこ」「ぜーぜー」といった喘鳴(ぜんめい)が聞こえたり、水分をとりにくくなったりしたら小児科を受診しましょう。
溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)の場合は、突然の発熱と倦怠感とともに扁桃腺が腫れて喉に痛みを感じます。舌がイチゴのように真っ赤に腫れるイチゴ舌が典型的な症状です。発疹が出ることもあります。子どもに多い病気ですが、大人でも発症することがあります。
溶連菌感染症とわかったときには、熱が下がったとしても、抗菌薬(抗生物質)で1週間から10日間治療します。急性腎炎、リウマチ熱、気管支炎などの合併症を防ぐためにも、処方された抗菌薬は、最後までしっかり飲み切ることが重要です。

手洗いや3密回避は多くの感染症予防に有効

新型コロナウイルス、インフルエンザ、RSウイルス、溶連菌、マイコプラズマ、冬に流行しやすいノロウイルスも含め、多くの感染症に共通する予防策は、手洗いや手指消毒の励行と、いわゆる3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けることです。石けんを泡立て、流水でしっかり手を洗いましょう。親指とそのつけ根は、洗い残しやすいので注意してください。マスクの着用は、自分の感染を防ぐだけではなく、症状のない人や症状が軽い人からほかの人への感染を防ぐ効果がみられます。ただし、2歳未満のマスクの着用は危険なのでやめましょう。
感染症になったとき、重症化させないためには、睡眠をしっかりとり、栄養バランスのよい食事をとるなど、ふだんから健康的な生活を心がけることも大切です。
糖尿病や高血圧など基礎疾患のある人は、その疾患をコントロールしておくことが重症化予防につながります。オンラインや電話による診療も活用し、基礎疾患の治療は主治医の先生と相談しながらきちんと継続しましょう。定期接種になっているワクチンの接種もそれらの病気を予防するために重要です。
感染症を防ぐには、流行期は家から一歩も出ずに動かない、ということが最も有効です。しかし、人は社会生活を営んでいます。生きていくうえでは仕事や趣味、同居の家族以外の人とのかかわりも重要です。ずっと家にこもっていると、うつうつとした気分になったり、運動機能・認知機能が低下したりするなど、別の病気になるリスクもあります。感染症対策をしたうえで、少人数で友人や親戚に会ったり、感染症対策がなされている場所での観劇や、コンサートを楽しんだり、ウオーキングやゲートボールなど、注意をしながら屋外で体を動かしましょう。
新型コロナウイルスやインフルエンザなどに感染するリスクはゼロにはできないものの、減らすことは可能です。感染症対策をしながら生活のなかで楽しみを見つけつつ、ウィズコロナ時代を乗り切りましょう。

ライター 福島 安紀

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