歩かない生活で増えてくる『巻き爪と陥入爪』

歩かない生活で増えてくる『巻き爪と陥入爪』

 肌を出す機会が多くなる季節は爪のトラブルが気になるものですが、医療機関を受診する人はわずか7%程度だといわれています。爪のトラブルで多いのは、足の指に起こる巻き爪で、爪が食い込んで強い痛みや炎症を引き起こす陥入爪を併発するケースも少なくありません。巻き爪や陥入爪は、足全体、さらに膝や腰などのトラブルにつながることもあります。どのように対処すればよいのか、予防やセルフケア、治療について紹介します。

監修

埼玉医科大学病院 形成外科・美容外科

簗 由一郎 先生 (やな・ゆういちろう)

2003年、高知医科大学(現高知大学医学部)卒業。東京大学形成外科入局。関連病院勤務を経て2007 年より埼玉医科大学病院形成外科勤務。
専門は形成外科学、特に巻き爪・陥入爪、眼瞼下垂などの眼形成再建外科。日本形成外科学会専門医。日本リンパ浮腫治療学会評議員。
2010年、佐々木病院(深谷市)に巻き爪専門外来を開設。日本で初めての巻き爪・陥入爪治療に特化したweb サイト「専門医と学ぶ 巻き爪・陥入爪治療の相談室」(https://medical-media.jp/ )運営。

爪は内側に巻く性質 歩行が爪の健康に関係

 巻き爪とは、爪が内側に巻いてしまっている状態のことです。多くは足の爪に起こり、かなり巻いているのに痛みがない場合、変形は軽度でも痛みがある場合など、症状はさまざまです。一方、巻いた爪が皮膚に食い込み、皮膚が炎症を起こした状態が陥入爪かんにゅうそう です。その結果、皮膚が傷つき、痛みや腫れ、肉芽、化膿の原因となります。爪が巻いていない場合でも、爪の端が皮膚に食い込み、陥入爪になることがあります。
 多くの人は爪のあたりの痛みはすべて巻き爪が原因だと勘違いしていますが、巻き爪と陥入爪はそれぞれ違った状態を指しています。
 爪というのは、もともと内側に巻く性質があります。その巻こうとする力を元に戻すための重要な要因が、歩行です。地面を踏みしめる歩行は、下から爪を押し上げる力となり、上からの巻こうとする力とバランスを取ります。そのため、爪の形が保たれます。しかし、歩くことが少なくなるなど上下の力のバランスが崩れると、爪のトラブ ルにつながります。

巻き爪、陥入爪の原因は環境・遺伝・病気

 巻き爪や陥入爪になる原因は大きく分けて①環境要因、②遺伝的要因、③病的要因の3つです。これらの要因が重なることで症状が出やすくなります。
 環境要因は主に3つあり、1つ目は指への過剰な圧迫です。幅が狭くヒールの高いパンプスや足に合わない靴など、指への圧迫があると上からの巻く力が強まり巻き爪の原因になります。
 2つ目は歩き方です。足の指を地面につけないまま歩く、いわゆる浮き指の人は、地面からの押し上げる力がかかりにくく、巻き爪が多いことが知られています。
 そして3つ目は、爪の切り方です。深爪をすると爪を下から支える面積が狭くなるため、爪が巻きやすくなります。また、爪が巻いていない場合でも、深爪によって切り残した角が皮膚に食い込んだり、爪切りの際に皮膚を傷つけてしまうことで、陥入爪になるケースが多く見られます。
 遺伝的要因としては、足や爪の形が遺伝することが関係します。巻き爪で受診した子どものお母さんが、実は巻き爪だったというケースも多いのです。また、遺伝ではありませんが、親が深爪だと子どもに間違った爪の切り方を教えてしまい、親子で巻き爪になっているケースも少なくありません。
 病的要因には、爪や足指の病気があります。外反母趾などで指が変形すると、下からの力が均等に加わらないだけでなく、親指が人さし指によって圧迫され、巻き爪になりやすくなります。また、爪の水虫といわれる爪白癬つめはくせんや、爪の下にできる腫瘍によって爪が巻くことがあります。外骨腫という骨の病気でも爪の変形が見られることがあります。
 そのほか、肥満も爪に悪影響を及ぼします。重い体重は爪に過剰な負担を強いるうえに、爪の周りの皮膚が盛り上がっていると、爪が食い込んで陥入爪になりやすいのです。

正しい歩き方と靴選び 爪の切り方がポイント

 爪のトラブルは、皮膚科、形成外科、整形外科を受診するとよいでしょう。最近は足を専門に診るフットケア外来を設置している医療機関もあります。巻き爪治療をしているか、ホームページなどで確認したうえで、受診しましょう。
 治療には、大きく保存的治療(フットケア、矯正治療)と外科的治療(手術)があり、炎症が強い場合などは内服薬や外用薬も使用します。保存的治療には、巻き爪の予防指導、爪の食い込みを和らげるためのテーピングなどによる保護、爪の形を直すための矯正治療があります。
 巻き爪予防のポイントは、①正しい歩き方、②靴の選び方、履き方、③爪の切り方――の3つです。(下図)
 まず、背筋を伸ばして正しい姿勢で歩きましょう。
 足はまっすぐに出し、かかとから足の裏を転がすように体重移動をし、最後に親指でしっかりと地面を蹴ることを意識しましょう。
 靴はつま先に1~1.5cmの余裕があり、足首や甲がしっかり固定できるものを選びます。ここが固定できていないと、歩いているときに足が前に移動して指先を圧迫してしまうため、巻き爪の原因になります。
 爪の正しい切り方は、爪が食い込まないように角を残すスクエアカットです。角はひっかかりやすいので、ヤスリなどで少し削るといいでしょう。深爪は巻き爪にも陥入爪にもなりやすいので、特に気をつけましょう。

矯正治療は自費診療 定期的にメンテナンス

 矯正治療は、爪の先に金属製のワイヤーを通し、形状記憶合金の力で爪をまっすぐにするワイヤー法と、金属のクリップを爪の先に取りつけて巻かないようにするクリップ法が主流です。
 ワイヤー法は、爪が伸びたら外して1、2か月に1度、付け替える必要があります。
 クリップ法は自分で付け外しが可能で、爪が伸びたら切り、再び装着することができます。新しい器具の開発によって、厚い爪や変形の強い爪の矯正も可能になりました。また、クリップ 法は市販の商品もあります。 
 そのほか、爪の根元に加工した金属のワイヤーをかけて矯正する方法や、樹脂のプレートを爪の表面に張り付けて矯正する方法もあります。
 どの治療も矯正した直後から痛みが和らぎますが、変形を治すには数か月かかり、また、健康保険の適用外のため自費診療になります。
 ただし、巻いていることが痛みの原因でない場合は、巻き爪を矯正しても痛みは改善しません。皮膚に食い込んでいる部分を治療しなければ痛みを取ることができないのです。
 また、巻き爪や陥入爪になる背景には、歩き方や窮屈な靴など、足の環境に問題があるケースが多く見られます。せっかく爪を矯正しても、これまでと同じ生活環境のままでは再発してしまいます。矯正治療を行いながら、同時に巻き爪や陥入爪の原因となる生活環境を改善していくことが必要です。

手術という選択肢も 自分に合った治療法を

 保存的治療が難しい、爪の食い込みが強い、痛みや炎症を繰り返すといった場合は手術という選択肢があり、健康保険が適用されます。手術の目的は、爪の幅を狭くして爪が皮膚に食い込まないようにすることです。爪の根元には爪母そうぼという爪をつくる細胞があり、これを処理することで食い込む部分の爪が生えないようにします。爪母をメスやハサミで処理する外科的方法と、薬剤を用いて処理するフェノール法があり、最近では後者が主流です。
 フェノール法では、食い込んでいる爪の両端を根元まで切除し、フェノールという薬剤でその部分の爪母を処理します。処理した部分の爪は生えてこないため、爪の幅が狭くなり、巻き爪や陥入爪の再発リスクが低下します。矯正治療などに比べると根治的な治療といわれています。一般的に日帰りで行われる場合がほとんどで、大きな痛みはなく術後の安静が不要のため、歩いて帰宅できます。
 ただし、手術をすると見た目に違和感を感じることがあります。残った爪が巻いてきたり、爪が厚くなる場合もあります。いったん処置すると元には戻せないので、どのくらい幅を狭めるかなど、医師とよく相談してください。
 足指の痛みを我慢して歩いていると、歩き方のバランスが悪くなり、膝や腰の痛みにつながることもあります。根本的に治すのは難しくても、痛みは比較的容易に和らげることができるので、まずは、自宅でできるセルフケアのほか、市販されている爪の矯正器具を試してみるのもいいでしょう。痛みが強く炎症がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

ライター 高須 生恵

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする