下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「高血圧の検査」

下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「高血圧の検査」

 人間の心臓は1日に何回収縮しているのでしょうか? だいたい10 万回ですが、ロボットではないので、血圧値は毎回異なります。ですから、ふだんは血圧値の高低で一喜一憂する必要はありません。では、どんなときに注意したらよいのでしょうか。

監修

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 主任教授

下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)

2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。梅雨のシーズンはつい運動不足に。夏に向けて野菜がおいしくなるので健康維持のため食事を改善中。

 血圧は日中やや高く、夜間就寝中は低くなります。また、ちょっとしたストレスですぐに変動します。立ち上がったり、電話が鳴ったことでも血圧は上がります。ですから、自宅で測定した血圧が少しぐらい高くても、急いで病院に駆け込む必要はありません。横になって少し休んだり、深呼吸をするだけでも血圧は下がります。
 受診が必要なのは、高血圧緊急症と呼ばれる状態になったときです。血圧が異常に高くなることにより、脳、心臓、腎臓などに障害が起こっている疑いがあります。下表のような症状がある場合は、入院治療が必要です。

 

●検査する項目
 脳の評価にはCT(コンピュータ断層撮影) 検査MRI(磁気共鳴画像) 検査を行うのが一般的です。心臓は心電図心エコーに加えて血液検査を行います。腎臓は尿検査と血液検査を行います。血液検査ではクレアチニン(Cre)、たんぱくアルブミン(Alb)、尿酸ナトリウム(Na)、カリウム(K)の値を測定し、腎機能を評価します。加えて、BNPNT pro BNPトロポニンなど心機能や心臓の血流の具合をみる検査を行います。尿検査では尿たんぱく尿中細胞尿中ナトリウムなどの濃度を測定します。さらに急に血圧が上がった原因を調べるためにレニンアルドステロンアドレナリンノルアドレナリンなどの血圧調節ホルモンの値を測定します。
 また、血圧の急上昇が繰り返されると血管が傷み、血栓をつくりやすくなるので、血管の傷み具合の検査なども行うこともあります。
●塩分が必要な場合も
 血圧が高いと、塩分を減らすようにいわれます。しかし、高血圧緊急症のときは、むしろ塩分をとるようにいわれます。これは血圧が高過ぎて尿中にナトリウムがたくさん押し出された結果、腎臓から分泌されるレニンというホルモンが過剰に出て、さらに血圧を押し上げるからです。治療では、塩分を補給してレニンの分泌を抑え、血圧が下がるようにします。
●高血圧緊急症になる原因
 圧倒的に多い原因は薬の飲み忘れです。ふだん降圧薬を服用している人がうっかり飲み忘れてしまうと、高血圧緊急症を発症しやすいのです。2022 年4 月からリフィル処方箋※ の制度が導入されました。忙しくて病院に行けないときでも、薬局でいつもの薬が手に入ります。この制度を活用して薬を切らさないようにしてください。

※リフィル処方箋とは、一定期間内ならば1 つの処方箋を反復利用できる制度です。病院へ行かなくても同じ薬を薬局でもらえます。2022 年度の診療改訂により日本でも実施されることになりました。

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