毎日測って数値を意識しよう『高血圧』

毎日測って数値を意識しよう『高血圧』

高血圧は自覚症状がほとんどありません。だからといって放置していると動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞、あるいは慢性腎臓病などの重大でやっかいな病気を発症する原因になります。日々の生活と深くかかわっている血圧は、生活習慣の改善によって、ある程度、管理できることがわかっています。自分の血圧に関心を持ち、適正な血圧値を保つ生活習慣を身につけましょう。

監修

国際医療福祉大学 医学部臨床検査医学主任教授

下澤 達雄 先生 (しもさわ・たつお)

1888 年、筑波大学医学部卒業。
1997 年、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
医学博士。東京大学医学部第四内科、同大医学部附属病院検査部などを経て、2005 年、同検査部講師。2017 年より現職。
東京大学大学院医学系研究科、東京女子医科大学、聖マリアンナ医科大学の非常勤講師も兼任。
専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌学会理事など学会の重職を務める。

重大な病気を引き起こす 「サイレントキラー」

高血圧は日本人に最も多い病気で、約4300万人が該当すると推測されています。そのうち適切に血圧がコントロールされているのは1200万人程度にすぎません。残りの約3100万人のなかには、治療を受けても目標の値に達していない人だけでなく、自分が高血圧であることを知らない人もかなり含まれています。まず、自分の血圧に関心を持ち、血圧値を知ることから始め、高血圧とわかったら適切に対処することが大切です。
高血圧には、ほとんど自覚症状がありません。そのため放置しがちですが、血圧の高い状態が続くと動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞など、命にかかわり、重い後遺症の心配もある病気を突然発症する原因になります。また、徐々に腎機能を低下させ、透析や腎移植が必要になることもあります。さらに新型コロナウイルス感染症の重症化にも関連するとの報告もあります。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれます。ひそかに動脈硬化を進行させ、重大な病気を引き起こす原因になるからです。

毎日測る家庭血圧が診断や治療の指標

血圧とは血管壁の内側にかかる圧力で、心臓が縮んだときの収縮期血圧(最高血圧)と、心臓が広がったときの拡張期血圧(最低血圧)があります。日本高血圧学会の診断基準では、診察室で測ったとき、収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、あるいは両方が140/90㎜Hg以上(以下、収縮期血圧/拡張期血圧で表記)の場合を高血圧としています。
血圧値は下表のように分類されます。血圧は病院で測ると緊張してふだんより高く出ることがあります。そのため、診察室血圧と家庭血圧の両方の基準が示され、家庭血圧は診察室血圧よりおおむね5㎜Hg低く設定されています。
診断や治療、治療効果の判定などのカギになるのは家庭血圧です。近年の研究で、家庭血圧のほうが、脳卒中や心筋梗塞の発症を予測する値として優れていることがわかってきました。学会の診療ガイドラインでも、家庭血圧を優先して診断や治療を行うこととしています。家で測る血圧の重要性を認識し、毎日、測定しましょう。

同一条件で測り値を記録しよう

家庭血圧を測るにあたっては、次の点に注意しましょう。
●血圧計
上腕にカフを巻くタイプを選びます。手首や指先で測るタイプは正確性が不十分で、値が高く出ることもあります。
●測定姿勢
足を組まずに座り、カフの位置が心臓と同じ高さになる台に腕をのせます。上腕の位置が低いと値が高く出ます。
●カフの巻き方
カフの下端が腕を曲げる位置より下にならないようにします。カフは素肌に巻きましょう。冬は片袖を脱ぎ、寒くない配慮を。長袖をまくると血管が締め付けられ、値が高く出ます。
●測定のタイミング
1日2回、起床後すぐと就寝前の測定が理想です。1回なら朝、朝が難しい人は夜でもかまいません。
●測定回数と記録
2回分の平均値を手帳やアプリに記録します。1回目は一般に高い数値が出ますので、3回測って2,3回目の平均値をとることをおすすめします。記録をとると無意識のうちに血圧を下げる行動をとるようになります。
血圧は常に変動しており、高い日があって当然です。1週間単位や1か月単位で140/90を超えた日が何日あるかを確認しましょう。飲酒、重要会議などの出来事を一緒に記録すると、血圧変動との関連が浮かび上がるかもしれません。毎週同じ曜日に血圧が上がる人もいます。傾向をつかむには、測定条件を一定にすることが重要です。毎日同じ時間、同じ場所、同じ状態で測るようにしてください。

秋は“食欲”に注意生活習慣改善のポイント

高血圧の治療や予防の基本は生活習慣の改善です。日本高血圧学会が発表している6つのポイントを実行するコツを紹介します。
①減塩
ハムやチーズなど、冷蔵庫から出してそのまま食べられるものは塩分が多くなっています。食品を買うときは成分表示で食塩量を確認しましょう。
②野菜・果物を積極的に摂取
生で食べられる量には限界があります。無塩、無糖のジュースは手軽に取り入れられるのでおすすめです。
③適正体重の維持
秋は血圧が比較的落ち着いている季節ですが、落とし穴は“食欲”です。血圧が高くなる冬の前に体重を増やさないよう、腹八分を守りましょう。
④運動
“スポーツの秋”は、無理なく運動習慣をつけるには最適の時期です。
⑤節酒
飲む量が日によって違う人は、1週間で「1日の適量×7」を超えないように調整しましょう。
⑥禁煙
禁煙外来を活用するのも一案です。
これらのうち1項目達成できれば、収縮期血圧は3~6㎜ Hg 、拡張期血圧は2~3㎜Hg、下がることがわかっています。生活習慣を改善して血圧をコントロールし、重大な病気を防ぎましょう。

ライター 竹本 和代

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