下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「炎症の検査」

下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「炎症の検査」

 炎症って、名前からしてこわいですね。体の中で火事が起きているみたいです。一定の状態で維持されている体の中で炎症が起こるというのは、危険信号を発している、つまり消防車がサイレンを鳴らしているような状態です。さまざまな病気の発症を教えてくれる炎症の検査について紹介します。

監修

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 主任教授

下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)

2017 年より現職。
専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。
日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。「子どものころからクラリネットを吹いています。ストレスの多いときにはゆっくりと音楽を聴いてリラックスしています」とのこと。

 臨床検査では、体の中で何が起こっているのかを知ることができます。体の中で炎症が起こっていれば、血液検査でその程度を数値化できます。検査項目としては血沈けっちん、CRP、白血球数を調べます。
 血沈は、赤血球が試薬の中をどれくらいの速さで沈殿していくかをみる検査です。1897 年に発明され、120 年以上の歴史がある検査です。1 時間でどれくらい沈むかをみるため、採血後結果が出るまで1 時間かかりますが、大掛かりな機械を必要としないので、どこでも簡単に行える利点があります。
 しかし、血沈は炎症だけでなく貧血でも値が高くなります。また、炎症が強くて血液が固まりにくい状態になると血沈の値は低くなるため、その結果の解釈には注意が必要です。
 CRPとは、炎症が起こっている場合に血液中に出現するたんぱく質で、大きな測定器で測定します。炎症があると、肝臓で急激につくられます。基準値以下の値でも、小さな上昇が長く続くと動脈硬化や心筋梗塞を起こすことがわかっています。そのため、将来の健康予測にも使われます。
 コロナによる肺炎やそのほかの感染症では、基準値の10 倍、20 倍と高くなります。この数値が感染症の重症度を反映するため、治療法を決めたり、退院の目安にしたりします。
 ただ、CRP も万能の指標ではなく、免疫反応が低下するような病態(白血病など)があると、炎症が強くてもCRP 値が上昇しないことがあります。
 白血球数は、細菌感染や炎症が強くて副腎からステロイドホルモンが大量に分泌されると上昇します。このほかにも炎症時に上昇する因子はありますが、臨床検査で広く使われるのはこの3つです。

 喫煙、塩分の取り過ぎ、脂質の取り過ぎが炎症を起こすことも知られています。
 日ごろから生活を見直して、体の中で火事が起こらないようにしましょう。

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