下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「認知症の検査」

下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「認知症の検査」

だれもが恐れる病気の1つが認知症です。
今号の特集にあるレビー小体型認知症もその1つで、 そのほかアルツハイマー型認知症、血管性認知症などがあります。
認知症の診断法について紹介しましょう。

監修

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 主任教授

下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)

2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。WBC で盛り上がり、これから夏に向けて世界水泳大会を楽しみにしています。大学では水泳部、個人メドレーをやっていました。

 

 最近、物忘れがひどいとか、人の名前が思い出せないなど、心配になることはありませんか? その原因が認知症かどうかは、どのように診断するのでしょうか? 自分でも診断できるのでしょうか?
 日本で一般的に行われている認知機能テストには長谷川式認知症スケールと呼ばれるものがあります。
 自分の年齢を言えるか、今いる場所はどこかを把握しているか、暗算ができるか、物を覚えられるか、言葉が滑らかに出てくるかといったことを調べる質問を9 つ行い、30 点満点で評価します。20 点以下だと認知症の疑いがあると診断されます。
 このほか海外で開発された検査もあります。認知症というと記憶力の低下が注目されやすいのですが、社会活動、運動能力など、多岐にわたる行動を総合的に判断します。
 さらに、脳のMRI検査CT検査、脳の血流の状態や脳の働きをみるSPECT(単一光子放射断層撮影)検査などの画像診断が保険適用になっています。SPECT検査は、微量の放射線物質を含む検査薬を体内に投与し、その薬剤の体内分布により臓器の働きや脳血流量をみる検査です。
 保険適用外の検査には、MRIを用いて脳活動を無害に調べるfMRI ( 機能的磁気共鳴画像法) や脳磁図(MEG)があります。今のところ、血液検査項目では認知症を診断することはできません。脳髄液を採取してアルツハイマー型認知症の診断を行う検 査もありますが、体への負担が大きいので、だれにでも行われるわけではありません。
 東京都では、「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」(とうきょう認知症ナビ) を紹介しています (下QRコード、https://onl.bz/7PnhdkR)。

  

 現在、認知症の進行を止めるさまざまな治療方法が研究されています。残念ながら特効薬といえるものはまだありませんが、本人が日常生活で心がけることや家族が気をつけることなどの知識は集積されてきています。各自の生活環境や社会環境に合う方法を探して適切に対処することをおすすめします。独りよがりにならないように医師や臨床心理士などと相談するのもよいでしょう。インターネット上の情報を取捨選択することも大切です。

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