下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「心電図検査」

下澤達雄先生の臨床検査かわら版 「心電図検査」

その胸の高鳴り、実は電気信号です

ワールドカップやWBCなどで、選手たちの活躍をみると、ワクワクドキドキしますよね。
胸が高鳴る、あれって何でしょうか? 人間の心臓は1日に約10 万回拍動しています。
そのリズムが乱れたり、急に早くなったりするのはどうしてでしょう。

監修

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 主任教授

下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)

2017 年より現職。専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事、日本クラリネット協会副理事長などを務める。「新年度はきっといいことがあるだろうと信じて桜を楽しみ、春の味覚を味わう日々です。そろそろ屋外での運動も満喫できそう」とのこと。

 

 1903 年にドイツに留学した田原淳(たはら・すなお:1873 - 1927)先生は田原結節と今でも世界中で呼ばれる部位(房室結節)を発見、心臓が、田原結節で発生した電気信号を伝えてリズムを刻んでいることを明らかにしました。同じころ、オランダのアイントーベン(1860 - 1927)先生は心臓が出している電気信号を記録することに成功しました。1924 年、「心電図のメカニズムの発見」によってノーベル賞を受賞しています。これが、現在広く使われている心電図の原型です。
 その後、心電図の技術は進歩し、今では簡単に測定できるようになりました。ホルター心電図は、日常生活を送りながら、長時間心臓の状態を記録・解析できる心電図です。また最近では、心電図を記録できる腕時計もあります。

 では、心電図では何がわかるのでしょうか?
 田原先生が発見した心臓のリズムをつくる電気信号、そしてその電気信号をつくる心臓の筋肉の働き具合がわかります。
 電気信号が出る場所や伝わる経路により、波の形が決まっています。その波を、地震と同じようにP波、S波などと呼びます。たとえば、不整脈と呼ばれる脈が乱れる現象でも、P波の異常(心房性)、QRS波の異常(心室性)、伝導経路の異常(心房ブロック、右脚ブロック、左脚ブロックなど)などに分かれます。これらは治療が必要なものと必要でないものがあるので、医師と相談が必要です。

 

 狭心症や心筋梗塞、あるいは過去に起こした心筋梗塞ついては、さまざまな部位につけた電極のうち、どの電極の波に異常があるかによって診断します。STと呼ばれる部分が通常より上がっている、あるいは逆に下がっていると、狭心症の疑いがあることを示します。このほか、心臓の肥大化も心電図でわかります。

 通常、心電図検査は1 分ほど静かに寝ているだけで終わります。両手、両足、前胸部に計6 つの電極をつけることで、心臓のどの部分が悪いかを調べることができます。ホルター心電図では4 つの電極をつけるタイプのものが一般的で、主に不整脈がどれくらいの頻度で、どんなときに起こるかをみます。ですからホルター心電図をつけるときは無理に運動を控えたりせず、ふだんの生活をするよう心がけ、不整脈の原因を診断できるようにしましょう。

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