栄養の新常識『たんぱく質の特徴と働き』
たんぱく質は体に重要なものと知っていても、どのような特徴があるのか、あまり知られていません。今回はたんぱく質の特徴と、体に対してどんな働きをしているのかを紹介します。

吉祥寺二葉栄養調理専門職学校 栄養士科 学科長 教授
伊沢 由紀子 先生 (いざわ・ゆきこ)
女子栄養大学大学院修了。社会保険新宿健診センター、東京医科大学病院栄養科、がん研究会有明病院栄養管理部を経て、2021 年5 月より現職。著書は『貧血の人の食事』『がん研有明病院の抗がん剤・放射線治療に向きあう食事』(女子栄養大学出版部)など。
体づくりに重要な たんぱく質
三大栄養素の1つであるたんぱく質について、みなさんはどのくらい知っていますか?
食事から摂取したたんぱく質は消化管でアミノ酸に分解され、小腸から吸収されます。そして、再びたんぱく質に組み替えられ、筋肉、臓器、血液、骨、皮膚、髪、爪などの主成分となります。人体を構成する成分の15〜16%をたんぱく質が占めています。
そのほか、さまざまな体の機能を調節するホルモン、体内の化学反応を助ける酵素、病原体から体を守る抗体などの材料にもなります。
さらに、たんぱく質は1gあたり約4キロカロリーのエネルギーをつくり出します。エネルギー産生栄養素(炭水化物、脂肪、たんぱく質)のうち優先的に使われるのは炭水化物ですが、炭水化物が不足すると、体内のたんぱく質や脂肪が使われます。
必須アミノ酸を バランスよくとる
体を構成しているたんぱく質はおよそ10万種類にも及びますが、それらはわずか20種類のアミノ酸の組み合わせでつくられています。
アミノ酸には、体内でもつくれる非必須アミノ酸(11種)と体内ではつくられない必須アミノ酸(9種)とがあります(下表)。必須アミノ酸は食事から摂取する必要があるのですが、では、何を食べればバランスよく摂取できるのでしょうか。
食品に含まれる必須アミノ酸の比率を表すアミノ酸スコアという指標があります(下表)。食事から摂取しなければいけない9種類のアミノ酸が、該当する食品にバランスよく入っているかどうかを示します。これにより食品中のたんぱく質の栄養価が評価できるのですが、必須アミノ酸のバランスがよいほど、このスコアは100に近くなります。
栄養学では「桶の理論」で必須アミノ酸のバランスを説明します。桶を構成している9枚の板が9種の必須アミノ酸を表し、その高さが食品中の含有量を表します。そして、たまった水が合成されるたんぱく質、桶1杯が1日の必要量です(下イラスト)。
必須アミノ酸は、肉、魚、卵に多く含まれています。大豆などの植物性食品にも含まれていますが、動物性食品のほうが栄養価は高く体内吸収率も高いため、動物性たんぱく質は「良質のたんぱく質」といわれています。
ただし、動物性食品ばかり食べていると、脂肪の過剰摂取が問題になります。また、アミノ酸スコアが高い食品ばかり食べるわけにはいきません。食材の組み合わせを工夫して、多種多様な食品から効率的にたんぱく質を摂取することが大切です。
ちなみに、たんぱく質が不足すると、さまざまな不調を招きます。疲労、ストレス、気力・思考力の低下、肌や髪のトラブル、筋肉量の減少、貧血・冷え性、病気への抵抗力の低下などが起こります。
食事だけで必要な量を摂取するのが難しい人は、サプリメントを上手に利用して、たんぱく質の不足を招かないようにしましょう。