脂質の質を考えて賢くとる『栄養の新常識』

脂質の質を考えて賢くとる『栄養の新常識』

 脂質はカロリーが高いから太る!? でも、魚油(フィッシュオイル)、アマニ油、えごま油などは健康によい……など、いろいろな情報を耳にして惑わされていませんか? 脂質の特徴について知り、バランスのよい食事を目指しましょう。

監修

吉祥寺二葉栄養調理専門職学校 栄養士科 学科長 教授

伊沢 由紀子 先生 (いざわ・ゆきこ)

女子栄養大学大学院修了。社会保険新宿健診センター、東京医科大学病院栄養科、がん研究会有明病院栄養管理部を経て、2021 年5 月より現職。著書は『貧血の人の食事』『がん研有明病院の抗がん剤・放射線治療に向きあう食事』(女子栄養大学出版部)など。

脂質は必要な栄養素だが とり過ぎに注意

 三大栄養素の1つである脂質について、みなさんはどのくらい知っていますか?
 そもそも脂質にはどのような働きがあるのでしょう。脂質は炭水化物、たんぱく質と同じくエネルギーを産生する栄養素です。そのエネルギー量は1gあたり約9キロカロリーで、1gあたり約4キロカロリーのたんぱく質や炭水化物に比べ、効率のよいエネルギー源です。
 しかし、とり過ぎるとエネルギー過剰となり、肥満になる恐れがあります。また、動脈硬化、脂 質異常症(高脂血症)、糖尿病など生活習慣病のリスクも増加します。
 一方、脂質は細胞膜やホルモンの材料となる重要な栄養素でもあります。脂溶性ビタミンの吸収をアップさせたり、体温を保持したり、内臓を保護するなどの役割があります。
 また不足すると、ホルモンバランスが崩れたり、エネルギー不足になったり、皮膚炎などを引き起こす可能性があります。
 脂質は、とり過ぎはよくないけれども、体にとって欠かせない栄養素なのです。

脂質の種類を意識して 効果的に摂取を

 脂質を構成している主成分は脂肪酸で、肉や乳製品など動物性の油やココナッツオイルに多く含まれ、常温で固まりやすい飽和脂肪酸と、植物性の油や魚油など、常温で固まりにくい不飽和脂肪酸に分けられます。
 飽和脂肪酸はとり過ぎると血液中の中性脂肪やコレステロール値を上昇させ、肥満や脂質異常症の原因となるため、注意が必要です。
 不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸に分けられます。多価不飽和脂肪酸のうち体内でつくることができないn-3系(オメガ3)脂肪酸とn-6系(オメガ6)脂肪酸は食事から摂取しなければならないため、必須脂肪酸と呼ばれています。
 n-3系脂肪酸の代表格はα - リノレン酸で、アマニ油、えごま油、くるみ、チアシードなどに多く含まれています。また、よく知られているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)もn-3系脂肪酸で、魚油に多く含まれています。
 また、ごま油、紅花油(サフラワー油)に多く含まれているリノール酸はn-6系脂肪酸です。
 一価不飽和脂肪酸の代表格は、オリーブ油やなたね油に多く含まれているオレイン酸で、n-9系(オメガ9)脂肪酸と呼ばれています。オレイン酸には、血液中の善玉(HDL)コレステロールを減らさずに、悪玉(LDL)コレステロールを減らすという効果があります。
 このような種類と性質を知っておくことが大切です。そして、肉や乳製品、ラードなどに多く含まれる飽和脂肪酸のとり過ぎに注意するとともに、n-3系脂肪酸の摂取を心がけましょう。
 EPAやDHAが多い魚を2日に1度は料理に取り入れ、α - リノレン酸の多いアマニ油やえごま油、くるみなどは小さじ1杯程度をサラダに入れるなどしてみてください。α - リノレン酸は熱に弱く揚げ物や炒め物など加熱調理すると酸化されやすいため、新鮮なうちに生食するのがベストです。
 一方、焼いたり炒めたりする油はオレイン酸の多いオリーブ油やなたね油にしましょう。オレイン酸はほかの脂質に比べ酸化しにくいので加熱や保存に向いています。1日大さじ1杯程度が目安です。量より質を意識して、脂質をバランスよく、賢くとることが大切です。

 

 

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