下澤達雄先生の臨床検査かわら版
生理検査について知っていますか?(2)

下澤達雄先生の臨床検査かわら版
生理検査について知っていますか?(2)

前号で紹介した心電図検査のように、生理検査とは測定機器を使って直接患者さんの体の状態を診る検査です。生理 検査にはこのほか、超音波(エコー)検査、呼吸機能検査などいろいろな検査があります。体の状態を直接検査する ので、実施する際は正確な状態がわかるよう、医師や検査技師の指示に従うことが大切です。

監修

国際医療福祉大学医学部 臨床検査医学 主任教授

下澤 達雄 先生(しもさわ・たつお)

2017 年より現職。
専門は高血圧学、臨床検査医学、内分泌学、腎臓病学。
日本高血圧学会理事、日本心血管内分泌代謝学会理事などを務める。
秋から自転車通勤再開。
防寒対策はしっかり。手袋はブレーキの効きにも影響するので忘れずに。
短い距離はクロスバイク、長距離になるとロードバイクと使い分けています。

Q 超音波検査の特徴を教えてください

 超音波検査が医療の世界で使われるようになったのは1970 年代からです。超音波検査はX 線検査とは異なり被ばくの影響がないため安心して受けられます。また、臓器の形の異常だけでなく、機能も同時に調べることができます。たとえば、心臓の超音波検査では心臓の肥大だけではなく、弁の動き、心臓の動きもわかります。

Q 呼吸機能検査では何がわかるのでしょうか?

 現在、新型コロナウイルスの感染が蔓延しているため、呼吸機能検査は注意して行われています。以前から肺炎や結核がある場合には検査が行えませんでした。呼吸機能検査では肺活量だけでなく、息をどれくらい効率よく吸ったり吐いたりできるかを検査して、気管支の機能を診ることもできます。また、吐いた息の中の成分を分析して気管支の機能の評価の助けにしています。この検査はできるだけ多くの息を吸い、一気に吐くことが必要であるため、何回か練習します。

Q 動脈硬化の検査にはどんなものがありますか?

生活習慣病の合併症である動脈硬化について、いろいろな検査方法が開発されています。現在広く使われているものに、両手両足の血圧を測りその比を算出して動脈の詰まり具合をみる足関節上腕血圧比(ABI)、脈波( 心臓の拍動) が伝わる速度を測る脈波伝達速度(PWV)※1心臓足首血管指数(CAVI)があります。動脈が硬くなると、脈波の速度が速まることから、これらは動脈の硬さの指標となります。このほかに血管がどれくらい拡張できるかを検査する血管内皮機能検査(FMD)があります※ 2。これは、血管を締め付けたのちに急に血管を開いたとき、どれくらい血管が拡張するかを調べる検査です。また、血管の形を診る検査として眼底検査頸動脈超音波検査があります。これらではそれぞれ毛細血管の硬さ、太い血管の肥厚や狭窄がわかります。

  • ※1 PWVは血圧の影響を受けやすく、血圧が高いだけで悪い数値になります。CAVIは血圧の影響をほとんど受けません。
  • ※2 乳がんの手術後や、透析のシャントがある患者さんは検査ができません。またPWVとほかの動脈硬化の検査を同時に行う場合は、PWV   を先に行います。
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