料理の豆知識今回のテーマ【しょうゆ】

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料理の豆知識今回のテーマ【しょうゆ】

このコーナーでは、ちょっと知ってほしい食事に関する豆知識をお届けします。今回は身近な調味料であるしょうゆを取り上げました。

悠久の時を経た「醤」がしょうゆのルーツ

日本の伝統的な調味料であるしょうゆ(醤油)は、主に大豆と小麦に麹菌を入れてできた麹に、塩水を加えて発酵・熟成させた「もろみ」を絞った液汁です。 起源については中国のひしおという説が有力です。醤は古代からつくられてきた発酵調味料で、紀元前800年前後の周王朝の文献にも記されています。日本の文献に醤が初めて登場したのは奈良時代。食事を取り扱う署の1つとして「主醤」ひしのつかさがあり、醤などの食品を製造・管理していたと書かれています。「しょうゆ」という名称は、室町時代に登場します。茶の湯とともに懐石料理が広まり、調理方法が進化。現在の味噌やたまりしょうゆに近いものだった醤も工夫され、液状のしょうゆとして使われるようになったといわれています。 その後、しょうゆは次第に人々に知られるようになり、江戸時代には本格的に生産されるようになりました。また、江戸時代中期には、オランダを介してヨーロッパにも輸出されています。大正時代にガラスの自動製瓶機が普及したことで、運搬が容易になり、増産されるようになりました。最近では、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、日本の食文化があらためて注目されています。しょうゆも新しい調味料として世界100か国以上の国で受け入れられています。

うま味を保ったまま塩分を減らす減塩しょうゆ

 塩分の摂取が気になる人には減塩しょうゆがおすすめです。しょうゆ100g中、食塩量9g以下( ナトリウムとしては3,550mg 以下) と定められています。製造法には、ふつうのしょうゆから塩分をとり除く脱塩法と直接製造法があります。各しょうゆメーカーは、塩分を減らしつつ、味・風味を保つために、いろいろな工夫をしています。

地域色豊かなしょうゆ持ち味を知って活用しよう

しょうゆは原料の割合、製造方法、塩分濃度の違いなどによって、JAS(日本農林規格)により5種類に分け られています。一般的なしょうゆはこいくち(濃口)しょうゆ。全生産量の約8割を占めています。蒸した大豆と炒った小麦を砕いて混ぜ、種麹を加えて発酵させたあとに絞ります。 うま味、甘味、酸味、塩味のバランスがよく、味を左右する苦味も持ち合わせています。香りがよいので、食材の臭みをやわらげる効果があります。透明感のある赤橙色をしています。主に関西でよく使われるのがうすくち(淡口)しょうゆです。兵庫県の龍野で初めてつくられたといわれています。色や香りは控えめで、お吸い物など、食材の色や味を活かす料理におすすめです。濃度の高い食塩水を多めに使うことから、こいくちしょうゆが塩分15〜16%であるのに対し、うすくちしょ うゆは16〜18%と高くなっています。 たまり(溜り)しょうゆは主に東海地方でつくられています。こいくち、うすくちは大豆と小麦の割合が1:1ですが、たまり醤油はほとんどが大豆で小麦はごくわずかです。色や味は濃厚で、加熱するとおいしそうな色あいになるので、照り焼きや佃煮などに使われます。そのほか、ほとんど小麦のみでつくられ、琥珀色をした白しょうゆ、麹を仕込む際に食塩水の代わりにしょうゆで仕込む再仕込みしょうゆがあります。 しょうゆの産地として知られるのは、千葉県の銚子と野田、兵庫県の龍野、香川県の小豆島、石川県の大野で、五大産地と呼ばれています。現代のように全国に物流網が発達していない時代は、人々が多く集まる地域に近い場所でつくられ、産地として発展していったのです。

しょうゆの栄養成分は? 香ばしい匂いのヒミツ

しょうゆにはアミノ酸、ミネラルが多く、抗酸化作用がある香り成分のフラノンを含んでいます。また、花やフ ルーツ、コーヒーなど約300種類の香りが含まれているといわれるほど、複雑で奥深い香りを醸し出しています。しょうゆを加熱したときの香ばしい匂いは、糖分とアミノ酸からメラノイジンができる際の香り成分です。しょうゆの魅力は味だけでなく、香りにもあるんですね。

刺身の普及に役立ったしょうゆの味わい

江戸時代中期まで、生の魚は酢や酒にかつおぶしなどを入れて煮詰めた煎り酒を付けて食べていましたが、次第にしょうゆを付ける食べ方が好まれるようになりました。しかし、当時のしょうゆの産地は上方が中心だったため、江戸では高価な調味料でした。その後、千葉の銚子でしょうゆがつくられるようになると、刺身に醤油とわさびを付けて食べるようになりました。しょうゆは刺身の普及に役立ったとい われています。食品と調味料の関係は大きいですね。

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